糸状菌は、抗生物質や免疫抑制作用を示す化合物に加えてカビ毒など、多様な二次代謝産物を産生することができます。そしてゲノム解析の結果から、さらに多くの化合物を産生する能力を有していると考えられます。そこで、多様な微生物を共存させて培養(混合培養)することで、対象糸状菌を刺激し、これまで休眠していた二次代謝を活性化させる現象を見出すことを目指します(図3)。
探索の対象は、分子生物学的な解析の容易な
Aspergillus属糸状菌を用いて、多様なバクテリア、もしくは糸状菌との混合培養を行います。培養条件(培地、時間、植菌量、混合のタイミング、etc.)を検討し、培養上清の示す生理活性を測定します。必要があればHPLCで成分比較をし、混合培養依存的に産生される化合物が存在すれば、その同定を目指します。このような探索を、組み合わせを変えながら広く検討する予定です。
<番外編>
混合培養では、糸状菌の細胞外に存在する他者との相互作用・応答を観察するわけですが、糸状菌細胞の内側に他者が存在するケースもあります。すなわち、マイコウイルスやエンドバクテリアの存在が近年よく知られるようになり、宿主にどのような影響を及ぼしているのかは、まさに研究途上にあります。このような共生的な相互作用現象についても、休眠二次代謝への影響が無いのか探究していく予定です。